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美容業界ガイダンス

 一見、きれいで華やかに見える美容の仕事に憧れて美容業界に入ってくる若者は多いのですが、残念なことに美容師になっても、すぐにやめてしまう人が多いのが美容業界です。以前でしたら、勤めていた店を辞めても他の店に移って美容の仕事を続ける美容師さんが多かったのですが、近年は美容を辞めて他業へと転身してしまう人が多い。これは美容業界にとっても困ったことですし、それより夢を持って美容業界に入ってきた若い人にとっても人生の大きな損失です。
 何しろ美容師になるには2年間、美容学校に通って美容師免許を取得しなければなりません。人生の大事な部分を無駄にしてしてしまう愚は何としても避けたいものです。
 そこで、まず美容を目指す人に美容業界がどんな業界かのアウトラインを知ってもらいたい。

たいへんだけど夢がある
 美容師の仕事というと、オシャレなサロンでかっこよくたち回り、お客様をオシャレにしてさしあげる、といういい面ばかりを見て、美容師に憧れている人が少なからずいると思います。確かに美容師の仕事はファッションに携わる一見オシャレで綺麗な仕事のように思われています。
 それは事実なのですが、一人前になるには美容学校を卒業して、国家試験の美容師免許を取得しなければなりませんし、美容師になったあとも、毎日の努力が必要です。
 とくに技術のスキルアップや新技術の習得など技術に関しては、美容師の場合、免許を取ったあとも、たいへんな努力が要求されます。一般の企業に勤めるように、朝9時から働いて夕5時になったらさっさと帰宅する、といった意識では勤まらないのが美容の仕事です。
 将来、美容の世界で、「ヘアアーティストとして活躍するのだ」とか、「独立して美容店を経営するのだ」といった明確な目的意識をもっていないと、途中で挫折する可能性が高い職業です。
 しかし、目的を達成するまでのたいへんさはあったとしても、会社勤めや他の仕事ではかなえられない夢のある仕事であるのも事実です。
 明確な目的意識をもち続け、その目的に向かって努力をしてきた先輩たちの多くは、自分の夢を実現し、充実した人生を送っています。

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広がる美容師の仕事
 美容師の仕事は、みなさん美容店にいったことがあると思いますので、おおよそはわかっていますね。
 ひと昔前は美容店はパーマ屋さんといわれていたようにパーマは、美容にとって主要な技術の一つです。パーマのほかにもカット、ヘアカラー、シャンプー、ヘアトリートメント、メイクアップなど、いろいろあります。
 最近は消費者のニーズに対応してエクステンションやオシャレ用のヘアウイッグを扱ったり、高齢化社会に対応して福祉美容を行ったりと、美容の仕事は多様化しています。平成20年には、まつ毛エクステンションは美容師でなければできない施術と通達がだされるなど、国家資格である美容師の仕事はより重要になってきています。
 また、これまで理容の仕事といわれていた顔剃りも、化粧に付随するという条件はつきますが、女性に対して行われるようになり、業界では顔剃りの講習が行われています。
 近年、エステティックやネイルを行うサロンが増えています。エステティックやネイルは美容師以外の人でもできますが、これらの仕事を行う上でも美容師免許をもっていた方が仕事をしやすいようです。着付、メイクアップ・アーティスト、ビューティカウンセラー、ブライダル・コーディネータなどの仕事を行う場合も、美容の知識は必要なので、美容師の免許は取得しておいた方がいいでしょう。
 「美」を扱う美容の仕事を中核にして、エステティック、ネイル、着付、メイクアップなど周辺のビジネスへと広がっています。これからも美に関する様々な新しい業態が発生する可能性がありますが、これらの仕事を行う上で、美容の知識・美容師免許は基本となるといえます。

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美容師さんはつらい 労働条件
 美容の仕事が夢のある仕事とはいえ、美容店に勤めてからの給与とか労働条件の現実についても知っておきたいところです。
 個人経営の多い美容業界は、以前は給与や労働条件面が整備されていないところが大半でしたが、最近は法人経営の大規模、中規模の美容店が増え、そのような会社組織の美容店では、雇用条件は明確にされ、労働条件も改善されています。
 とはいうものの、一般の大手の会社に比べると、勤務時間や有給休暇、福利厚生面などではいまだに見劣りしているのも事実です。週休2日は一般社会では常識ですが、美容業界の場合、週休2日は増えてはいますが、すべての美容店が週休2日ではありません。
 給与は、美容学校を卒業した新人の場合、求人募集資料を見ると、16万円前後から17万円ぐらいが多くみうけられます。また、美容店によって一時金(ボーナス)の支給率に大きな差があったり、給与以外の労働時間や休暇、福利厚生面などの待遇面も美容店によって差があります。
 美容師の場合、美容店に就職したあとも技術の習得向上が一つの重要な課題になります。そのため、就職先の美容店を決めるときには、給与や労働条件などの待遇面だけでなく、教育指導体制も就職先を選ぶときの重要なテーマになってきます。

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独立して美容店の経営者に
 美容師になって独立するのは、この業界に入ってくる人の夢の一つだと思います。
 夢を夢に終わらせないためには、まず美容師としての確かな技術が求められます。昭和のころでしたら、技術があれば小さな美容店を構えて何とかやっていけたのですが、最近は経営手腕がないと美容店を経営・維持していくのは難しい状況です。家業が美容店の人は別ですが、独立する人は、まずそれなりの資金がなければ開店できませんし、独立時の集客力がないと頓挫する可能性が高い。
 その前に、一口に美容店といっても、住宅街に出店する場合、商店街、駅近くのビル内、郊外店‥など出店する場所によっておのずと対象とする顧客は異なってきます。美容店の営業内容も変わってきます。自分が経営したい美容店を明確にし、その目的に合った開店準備をする必要があります。
 住宅街への出店は費用的には出店しやすいのですが、顧客は周辺に住む人達になり、幅広い年齢層を顧客にすることになるので、技術もオールマイティにこなさなければなりません。繁華街では、幅広い層の顧客が多く集まりますので、年齢層を若年に絞り込んだり、ヘアカラーをメインメニューにしたりとか、美容店の特徴を明確にすることが営業的に求められます。当然技術もより専門化します。また広告宣伝による集客方法についても戦略を立てることが重要になります。
 美容学校を卒業するときには、ある程度自分の進むべき方向性を踏まえて、就職先を探すといいでしょう。住宅街で地域に密着した美容店をやるのか、それ以外の特徴ある美容店を経営するのか、その程度の意識はもって卒業したいものです。

*美容師資格だけでは開業できない
 平成22年に行われた事業仕分けで、管理美容師講習が仕分けの対象になり、「なぜ一人では受講の必要なくて、二人からなのか?」と指摘されました。これまでは一人で店を開くには管理美容師講習の受講は必要ありませんでしたが、この指摘を受けて、一人店でも受講が義務づけれる方向で検討が進んでいます。
 つまり、美容師の国家資格では美容の業はできますが、美容店を開業するには管理美容師講習の受講が必要になり、受講資格が得られるまでの3年間は開業できなくなります。
 とはいっても、この管理美容師講習、美容師免許試験ほど難関ではありませんので、ご安心を。

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美容師の将来は独立だけではない
 以前でしたら東京で美容の修業をして田舎に帰って美容店を出すのが美容師としての一つのパターンでしたが、最近は規模の大きな美容店が増え、法人化された会社の中で管理職としてマネージメント業務に就くことも選択肢の一つになりました。マネージメント業務の場合、美容師としての仕事以外の管理能力や指導力が必要ですので、誰でもなれるわけではありませんが、法人化された美容店が増えつつある現状では必要な仕事です。
 また、有名美容店では、定期的に最新のトレンドを取り入れたヘアスタイルを発表し、女性誌などで積極的に仕事をしています。このような有名美容店の多くは、新しいヘアスタイルを発表するためのアーティスティック部門やアトリエを設け、専属スタッフが創作を担当しています。
 このような仕事をするのは美容師の憧れであり、夢でもあります。ただし、誰でもが女性誌や一般マスコミに登場するような美容師になれるかというと、そんなことはありません。独創性のあるヘアスタイルの創作力、トレンドに関する優れた感性、たゆまぬ努力、マスコミ受けするキャラクター、そして運も必要です。マスコミの世界で仕事ができるのは、ごく一部の限られた人ですが、毎年多くの美容師が登場しているのも事実です。夢に向かって努力するのも青春かもしれません。

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美容師は一生働ける仕事か?
 住宅街に独立して個人経営でやっている分には一生働ける仕事といえます。住宅街の美容店は経営者=技術者が多く、技術者の年齢が上がれば顧客の年齢層も相応に上がり、バランスがとれるのです。50過ぎの美容師さんのところには、プラスマイナス10歳、つまり40歳から60歳ぐらいの客が中心顧客になって、来店されるようです。
 しかし、若い人を相手にした美容店で働く美容師さんは状況が違います。よく手に職をつければ一生食いっぱぐれがないといわれ、美容師さんには定年がないように思われがちですが、現実には定年はあるのです。
 若い人相手の美容店では、40歳を過ぎた美容師さんはお客さんから敬遠されるようになります。これは技術力うんぬんではなく、ジェネレーションギャップ、若い人との感性の落差から嫌われる傾向にあります。若い客はやはり若い技術者にやってもらいたいのです。
 とくに男性美容師さんが一生美容で働くためには、しっかりとした人生設計と努力をしないと、挫折することになります。

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競争は厳しいけど活性化している
 社会の大きな流れとして、美容のように人の美にかかわる仕事は将来性のある職業として評価されています。エステティックなどの周辺の美容産業を加えると、市場規模は拡大傾向にあります。少子化を迎えた日本ですが、この美容分野は成長が見込まれる分野の一つになっています。
 美容店は年々増え続け、全国では22万軒を超える美容店が営業しています。あちこちで見かけるコンビニエンスストアが全国で5万店程度といわれていますので、いかに多いかがわかります。現状の店舗数は、欧米などと比て(対人口比)みても、あきらかにオーバーショップ(店舗過剰)による過当競争の状況にあります。
 オーバーショップの背景には、美容師志望者が多く開業志向が強いのはいうまでもありません。最近では減ったとはいえ、毎年約2万人の美容師が誕生し、業界に参入しているのです。彼らのうちの何人かは数年後には独立し店舗は増えます。開店数の増加にともない廃店数も増え、競争は激化しています。
 以上のように、現状は厳しいものがありますが、美容は産業としては活性化しており、競争することで今後ますます発展する可能性がある産業として期待されています。

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多様化しながら進化する美容業
 以前は個人経営の美容店がほとんどでしたが(いまでも個人経営は多い)、近年、法人が経営する美容店や株式上場を果たす美容店が現れるなど、経営母体はだいぶ変化してきました。
 仕事の内容も、ヘアカラーだけを行う専門店やヘッドスパやヘアケアとトリートメントだけを行う専門店、エクステンション(つけ毛)専門店が現れるなど専門店化の方向や、低料金を戦略にした美容店、逆にデイスパを取り入れた高級総合美容店やネイルやエステティックなどを取り入れた複合サロンなど、いろいろなコンセプトの美容店が登場しています。その一方で、経営努力をしない美容店は大苦戦しています。
 人間の美に対する追及はとどまることなく、かつ多様化しています。消費者の美の欲求を満足させるための新しいタイプの美容店が登場し、新しいタイプの美容店が登場することで新たな需要を開拓していきます。美容店はこれからもニーズ(需要)とサプライ(供給)が絡み合いながら、進化・発展していくでしょう。

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